セミの鳴く夏

今日は休日。一歩も外に出ませんでした。何ヶ月ぶりだろ。タバコを吸うのにベランダには出たんですが、セミの鳴き声が聞こえなくなったのに気付きました。3ヶ月位鳴きっぱなしだっただけに、夏が終わったみたいでちょっと寂しいですね。

僕は田舎育ちなんですが、(一応人口1万7千人の街でしたが)夏休みになると、もっと田舎の福島県の親戚の家に毎年遊びに行ってました。朝は庭の桃の木に寄って来るカブトムシを捕まえ、おじさんが起きると一緒に畑のきゅうりなんかを取りに行ったり、朝ごはんを食べたら沼でザリガニとって、夕方になればお盆だったりするんで送り火たき、夜になると家の周りにたくさん蛍が飛んでたり。言わば、正しい日本の夏を過ごしていたわけです。今考えると日本人としてすごく貴重な経験をしたなって思います。

そんな素晴らしい福島の夏休みで必ず思い出すことがあります。夕ご飯を食べて茶の間で眠くなった僕は、横になってウトウトしていました。ヒグラシが鳴いてたかな。その時テレビから何人もの日本人の名前を読み上げるアナウンサーの声が響いていました。あんまりにも眠かったので、なんでこんなに人の名前を呼んでるんだろうと思いながら寝てしまいました。次の日、それが日航機墜落事故のニュースだったと知りました。あれはもう20年前の夏の話になるのですね。セミの声を聞くたび、楽しかった子供の頃の夏の思い出とともに、アナウンサーが無機質に犠牲者の名前を読み上げる声がよみがえります。

あの事故以来、幸いなことに大きな飛行機事故は日本ではありません。今では僕も一年に何十回も飛行機を利用する生活を送るようになりました。飛行機に乗ることにどんなに慣れても、あの夏のあのテレビの声をふと思い出し、不安な気持ちになってしまうんです。