純粋無垢

銀座から家へ帰る途中に、錦糸町の寅屋でマグロを買って帰ろうという話になり、初めて14号線で自宅(市川)へ帰ることになりました。たまには下道(したみち)もいいものですね。家路につくサラリーマンや、買い物に来ているお母さんでごった返す町並みを見ながらのドライブ、結構安らぎます。さて、本題はここから。赤信号で停車中、僕の目にとまったのは1軒のお肉屋さん。店の中では店主らしき男性とその息子らしき男性が忙しそうに働いていました。その息子らしき男性が丸々とそれは見事に太っていたのを見て、ある思い出が突然浮かんできました。
あれは多分僕が2,3歳のころの話。家の呼び鈴が鳴ったので僕は玄関に駆けていきました。
『はーい。どちらさまですか?』
母親は台所で食事の準備でもしていたのでしょう、すぐに玄関には来ません。
『新聞の集金に参りましたぁ。』
と、集金係の丸々太ったお兄ちゃん。新聞の集金なんて言葉知らないけれど、お母さんに来客を知らせなければなりません。そこで僕が発した言葉は、
『おかあさーん、ぶたにくのおにいちゃんがきたよー。』
もちろんこのお兄さんは肉屋でもなんでもありません。肉屋のお兄さんに似ていたわけでもありません。ただ、豚のように太っていただけなのです。僕の声を聞いた母親は、そのお兄さんに申し訳なくて中々玄関に行けなかったと言ってました(笑いを我慢できなかったのも出て行けなかった理由らしいのですが)。子供って本当に残酷ですよね。お兄さん、その節は失礼いたしました。
ま、”ぶたのおにいさん”ではなく”ぶたにくのおにいさん”と言ったあたりに僕なりの優しさを感じないわけでもないですが。